KEEPを忘れない :-)

以前こういうことがあった。

巨大なシステムなので、毎週各チームのリーダが集まり進捗会議を行っている。その会議をあるマネージャがまとめているのだが、なかなかうかくいっていない。結合テストをはじめて1ヶ月が経過したくらいだったように思う。

  • リーダ:「各層とのやりとりでインタフェイスのミスがありました。」
  • マネージャ:「毎回、そういうミスがあるようだが、どうしてだ。」
  • リーダ:「気をつけて確認はしているのですが、どうしても漏れがあるようで..」
  • マネージャ:「毎回こういうことの繰り返しではテストにならないよね。」
  • リーダ:「はい..」
  • マネージャ:「もう一度よくお互いにインタフェイスの仕様をよく確認したほうが良いんじゃないかな。」
  • リーダ:「....」
  • マネージャ:「みんなにも言うけど、単純なミスが多すぎる。レビューしているのか、と疑いたくなる。もっと慎重に確認してくれ。特にインタフェイスが違っていたらつながらないのだから、そこのミスは致命的だ。わかってますか?」
  • リーダ:「...」
  • マネージャ:「一度、インタフェイスの仕様を見直したほうが良いのでは。テストを止めてでももう一度確認すべきだ。」

ただ、これは目を皿のようにして仕様書を確認し、絶対にミスが無いようにしなければいけない、というやりかただ。こういうやり方はテストができない環境では確かに必要だ。しかし、ITの世界では少し考えにくい。テスト環境は容易に用意でき、回帰テストも通常は何度も行えるのだ。

しかし、マネージャは何でこんな当たり前のことをいまさらのように言うのか。私たちだって10年以上この業界で過ごしてきたプロ集団だ。そういう人を前にして言うセリフでは無いように思う。確かに、開発は遅れていてなんらか対応していかなければいけない、と感じているメンバは多い。このまま行ったのではダメなんじゃないか、という雰囲気が出始めていた。そこでマネージャはもっと厳しくもっと丁寧な仕事をさせ、今と異なることをすれば何とかなる、と考えているのかもしれない。

実際、リーダたちもどんどん遅れていく開発状況を知っているのであせりはでていた。何とかしたいとは思っているのだが、これ以上はがんばれない、という状況でなんとか作業を進めていたのだ。

話が変わるようで恐縮だが、「ふりかえり」というプラクティスが好きで良く行うのだが、そこにはKEEPという項目がある。つまり「カイゼン」だけをするのではなく、良かったことは継続しよう、ということである。今回も、テストをしてインタフェイスのミスに気づいたので、私としては「テストをして問題をみつけよう」というのをKEEPとして継続していきたい。

問題がある場合、「カイゼン」ばかりを意識しがちだが、KEEPを忘れずにしたい。すべてが悪いわけではない。最善を尽くしていても、それがまだ結果に現れないことも多い。ここで慌てふためき、いろいろな対応ドタバタとしても結果は却って悪くなる場合が多い。まだ結果が出ていなくても、良いと信じていることは、自信をもってKEEPしていきたい。前記のプロジェクトでも「テストを行う」はKEEPで、「仕様書の確認を十分に行う」というのは必要なかったと感じている。

KEEP。継続。これが大事な場合もあるのだ。

またそういうKEEPがあると認識できれば、それは自分たちのやってきたことに「誇り」を持つことにもつながる。自信をもって作業に当たることができるのだ。「ダメだなぁ」とばかり感じて作業するより、「今できる最善をつくしている」と感じながら作業するのは大きな違いだ。自分への自信にもなるし、仕事自体も楽しく感じるだろう。そういう雰囲気からさらに人間やチームはパワーアップしていくのだ。問題がある場合でも常に「KEEP」を意識することを忘れないでいたいものだ。