正直は割に合う
- 「今回の見積もりは、なぜ以前と比べてこのように高額なのですか?」
今回の案件は1年近く前に見積もりをし、その当時は要件検討不足で保留になっていた案件を若干変更して再見積もり依頼をいただいた、という内容だった。しかし、すっかりその当時の提示見積もり金額との比較を忘れており、純粋に新たな要件で見積もったのでその2つの見積もりの整合性をチェックしていなかったのだ。
- 「以前の見積もりの3倍近いと思います。どういうことか、ご説明願えませんか?」
明らかに、お客様はこちらを疑っている。
こういうとき、自分に自信がないと焦ってしまうし、変なことを口走ってしまうことも多そうだ。
- 「今回は儲けてやろうと大きな利益幅を追加してしまったのだろうか?」
このような考えも自分の頭をよぎった。「なんて誤魔化したらよいのだろう。」と考えてしまう場合もありそうだ。しかし、考えてみると、
- 「自分はお客様に嘘を言ったことはない。」
という強い自信が自分の中にあったため、適切な見積もり金額のはずだ。実は、ある細かな特定機能の実現に非常に多くの工数がかかっており、前回の見積もり時にはなかった機能だったのだ。(この時点で実は見積もりは4,5案件ほど並行して提示していたので、少し記憶力も落ちていて、すぐに気づかなかった。)自分の中ではまったくやましいことがないため、すっきりとお客様に説明できた。今回の見積もりには根拠があり、正当であり自社の利益のみを追求しているわけではない、ということが伝えられたと思う。
こういう突然のドッキリした質問に自信を持って答えられたのも、「自分は嘘をついたことがない」というのが一番のポイントになったように思う。
システム開発を進めていると、どうしてもお客に嘘をついてしまいたくなるケースが多い。
- 「ある条件が重なると、挙動がおかしくなるが、そんな条件は重なることはめったにないのだから、お客様に説明しなくてもよい。」
- 「こんなエラーが出ることがあるが、大きな問題では無いと思うので、連絡もしないし、対応もしなくてよいだろう。」
- 「この仕様書は、本来の要望と違うように思うが、わざわざ言わないで、書いてある通りに実装してしまおう。連絡する必要はない。」
- 「いつも利益が出ていないので、今回は黙って大きな利益幅を載せて見積もりを提示してしまおう。」
しかし、自分のなかではどんなに自社に不利益だろうと嘘をついて、誤魔化そうとしたことはなかった。そういう自信が自分にはあった。なので、自信をもってお客様に説明ができたし、見積もりに正当性があるといまでも自信を持っていえる。嘘をついていないと、こういう自信が持てる。
「正直は割に合う」のである。