プログラマ35歳定年説

プログラマ35歳定年説というのは、私がこの業界に入ったときにも言われていた。新しい技術を取得し、プログラミングをするには、若手で無いとついていけない、という意味であるが、最近の傾向はプログラマに限らず、ITエンジニア40歳定年ではないだろうか。

私も43歳。新しい技術は目白押し、若手からは難しいことを当たり前のように話され、勉強しようにも難しくてついていけない。仕事でも、自分の能力の低さがわかるから、その分残業でカバーしようとし、一生懸命仕事に望んでいる姿勢を顧客にも自分にもアピールして精神バランスを何とか保とうとしている、そんな姿が40歳ではないだろうか。

若手から見れば、こんな感じを40歳の先輩には思い抱いているのではないだろうか。

  • 技術力が低い
  • 新しいことを何も知らない。
  • 説明しても理解してもらえる能力も無い
  • スキルが低いくせにプライドだけ高いから扱いにくい。
  • おまけに、自分より給与が高い。評価制度を疑うよね。
  • 少しは勉強してくれよ。
  • 能力が低いくせに残業だけは一人前。付き合わされるほうが困るんだよね。

自分で書いていても、自分のことをこう思っている人がたくさんいるのではないか、と感じ、悲しくなる。

では、40歳を越えたらITエンジニアはどうしたらよいのだろう。もう、現場から退き、管理職や営業職しか行き場は無いのだろうか。(管理職や営業職を下に見ているわけではありません。あくまでエンジニアとしての将来と言う意味で言っています。)

40歳まで培った経験って何も生きないのだろうか。スキルが低いので、存在価値は無いのだろうか。

いやいや、そんなことはない、と思いたい。自分がいることでどんなプラスがあるだろうか。いくつかあるような気がする。

  • 年上からの指示には従いやすい。

やっぱり人間が作業をする場合、自分より極端に若い人に指示を出されるのは気持ちの良いものではない。本当は、正しい指示に従うし、必要に応じて提案し、誰が指示を出すとか、出されるなんて関係ではないのが望ましいが、チームを組むとある程度、そんな雰囲気は出てしまう。特に「リーダ」という肩書きがつくと、日々の問題に対し、Actionの方向性を決定しなければいけない立場になる。そういうときに、どうしても「XXくん、これこれの対応をぺけぺけしてもらえるかな。」などと指示出しに近い状況は出るだろう。それが、あまりに若手から言われると面白くないメンバもいるだろう。

  • 年上には相談しやすい。

難しいが、若手同士では対立してしまう場合でも、年上の落ち着いた人には相談しやすい、と言う側面もあるのではないだろうか。

  • 深くは無くとも広い知識が必要になる。

開発を続けていると、いろいろ決めなければいけないことがおきる。アーキテクチャの設計、機能要件の洗い出し、日々起こる問題の解決、これらは深い知識よりは、広い知識を求められることが多い。たとえば、データベースのレイアウト変更を若手が設計したときに、他の業務への影響範囲を検討できたり、たとえばSOAを導入しようとしても、そのパフォーマンスやEODの側面から良い面と悪い面があるなど、実際に経験していないとわかりにくい問題などもある。

  • 多くのメンバの状況を知り、全体を俯瞰して考えられる。

たとえば、ある若手がDIコンテナ導入をしましょうと提案し、それを採用する方向に動いていたとしても、他のメンバのスキルが追いついていない場合、無理に導入するメリットが少なかったりする。優秀な若手はDIのよさがわかっているから、言うのだろうが、DIもたとえば、そのよさが理解できていないと、DIを生かすオブジェクト指向設計ができていなければ、開発効率が下がることもある。(JavaWorld2005/9月号参照)

  • 安心感がある

やはり、経験があり、今までにプロジェクトを成功させてきた人には、安心感が生まれる。いくらスキルが高くても、プロジェクトが成功するわけではない。特に、若手の場合、プロジェクトの目標(動くソフトウエア)を達成するのではなく、自分のアーキテクチャを実現することを目標と思ってしまう人もいたりする。つまり、最高のアーキテクチャを採用することが、最も良いこと、と思っていたりするのだ。その場合、プロジェクトの目的とずれてしまうと、却って逆効果になることもある。特にあまりに新しい技術はまだ「枯れていない」ので、心配もある。私は、以前、IPv6でネットワークを組んだWebServiceを使用したプロジェクトに参加していたことがあるが、IPv6ドライバの不具合で、Socketの開放が行われず、たいそう苦労したことがある。やはり、経験をつんだベテランの方が、安心して任せられる。

ITエンジニア40歳定年なんて、認められないね。まだまだがんばれるよ。ただ、40歳を過ぎても、IT業界にいる限りは勉強は続けなくてはいけない。上記のようなメリットを発揮するには、やはり浅くても良いから広い知識は必要だ。少なくとも、若手が何を言っているかを理解する能力程度は無ければいけない。

そのためには、個人差もあるだろうが、書籍が一番である。Webにもいろいろ情報はあるが、Webはいつでも見られ、タダなので、どうしても油断する。やはり、自分のお金を使って書籍を購入し、ありがたく読まないといけない。何でもいいから1ヶ月に1冊は雑誌を購入し、2ヶ月に1冊は書籍を読むぐらいはしたほうがよいだろう。以前は会社経費で購入すべきとも思っていたが、やはり自分のお金で購入することに価値がある。周りを見ていると、ごく一部の人を除いてみんな自分で書籍を購入している人が、スキルが高い。

ITエンジニアは40歳を越えてもまだまだ現役でいられます。いられると思っています。そしてそれを実現するため、少しでも自腹で書籍を購入し、読みましょう。私は今まで、あまり書籍を購入もしなかったし読んでもいなかった。まだ遅くはありません。そう、だいたいすべてが新しいので今の新しいことを抑えておけばよいのですから。