「あなただけは残ってください」 :-|

非常に厳しいプロジェクトに参加しているが、そろそろ本番リリースを迎えようとしている。自分は、システム開発に携わるようになって来年で19年目になるが、本番リリース時に開発チームにいることは初めてだ。今までは開発時は多くのメンバが作業をするが、リリース時はそれほど多くのメンバは必要なく、大抵、作業を終了していた。そういう意味ではとても貴重な経験をしている。言い換えれば、開発メンバがまだたくさんいなければいけない状態でリリースを迎えている、ということでもあるのだけど。

しかし、さすがに本番リリース直前と言うこともあり、開発メンバが今月で何人かが作業を終了する。大抵は、早めにプロジェクトを抜ける人は、プロジェクトにとってそれほどクリティカルではない、と判断された人が抜ける場合が多い。もちろん、お互いの企業同士の思惑などもあり、そのとおりではないが、「どうしてもあの人だけには残ってもらいたい。」という要望を受けることも多い。

エンジニアなら、「あなただけには残ってもらいたい。」と言われるのはエンジニア冥利に尽きると言うものだ。しかし、なかなかそういう発言を自分は聞かない。そしてどういう人が、「残ってもらいたい」と言われるかを今のプロジェクトで見てみると、以下のような状況にある人が残ってもらいたい、と言われているのだ。

  • その人しか知らない技術がある
  • その人しか対応できない分野がある

高いスキルの持ち主であれば、確かにその人にしかできない分野や作業があるのだろう。しかし、現実を見るとそういう人は大抵単価も高く、請負側の企業もそういう人は次の案件の立ち上げに期待していたり、掛け持ちなどがあり、意外とひとつのプロジェクトに長くいることは無いように思う。では、どういう人が、「残ってください。」と言われるかと言うと、実は、他の人にスキル伝播を怠っていたり、情報を公開していない人が多いように思う。確かに、せっかく自分で調べたり、苦労して得たスキルを簡単に伝播させるのはエンジニアとしては面白く無い場合もあるかもしれない。しかし、プロジェクトを成功させるためには自分の知識すべてを公開し、プロジェクト成功に向け最大限の努力をすべきでは無いだろうか。「そんなことをすると、自分のスキルが相対的に低下してしまう。」という人もいるかもしれないが、現在のオープンソースの流れや、Webでの情報公開を見ると、数多くの人が、さまざまな情報を公開し、我々もその恩恵を受けている。自ら自分自身しか知らないような情報でも公開することで、さらにその流れを加速させることができるのではないだろうか。実際、どうしても知りたい情報が見つからなかった、という経験は無いだろうか。本当はどこかに同じような苦労をして、解決した人もいるのだと思う。しかし、その情報を公開しないために、同じような苦労をたくさんの人がすることになるのだ。しかし、もし、あなたが苦労した結果解決したならば、その情報を公開すれば、数多くの人の役に立つ可能性があるのだ。そしてこのように考える人が今よりもっと増えれば、困ったときにでも今よりもっと早く有用な情報を得ることができるかもしれないのだ。

つまり、自分の知識をさらけ出すことは、自分自身のためになる。と言いたいのだ。

自分自身だけの知識を溜め込み、プロジェクトの中での重要人物になっても、それはプロジェクトの推進には必ずしも役立っていないのだと思う。その考えをどんどんつき進めていくと、最後にはシステム開発は誰にでもできるし、皆が情報を公開しあい、皆が協力すれば、どんなチームでもシステム開発を成功させることができるのではないだろうか。もちろん、ある程度の一般的な知識は必要だが、高いスキルのメンバは必ずしも必要で無い気が最近している。