説得できる能力

自分に欠けているのは、「人を説得する能力」だと思う。システム開発時には、割合良い方向で物事を考えているように思うが(先進的なアーキテクチャはちょっと弱いけど。)、それ以外はあとになっても自分の考えはそれほど大きく間違えていなかった、と思うことが多い。良くあるのが、私が

私:「これこれこういう理由だから、こうすべきです。」
ほかの人:「いいえ、こっちのほうが良いです。それは納得できません。」

と対立したときに、相手に対し自分の主張を説得できなければいけないのだ。いろいろな点から説明したり、説得用の資料を作って説得しても、納得してもらえないことも多い。やりきれないのは、納得してもらえなく、ほかの人の主張を通したあと、その間違いが明確になり、最終的に忘れたころに私の主張が採用されている、と言うケースだ。たいがい即時にわかるようなことは説得できるのだが、少し時間がかかるケースはやはり説得が難しい。「あのときに、もっと相手が納得するまで、説得すれば良かった。そのほうが相手にとっても幸せだったのに。」と思うことはしばしばである。

このような相手を説得する、と言うことには2つの面があるように思う。

  • あまり固執せず、致命的でなければ相手に花を持たせる。
  • 相手を説得する高い能力を身に着けること。

まず、致命的でなければ相手に花を持たせる、といのは常に意識したいところだ。船頭多くして船山に上ると同じことだ。相手が言い出したことなら、相手は真剣に取り組むだろう。失敗したって致命的でなければ良い経験になる。メンバーの高いモチベーションのためにも相手に花を持たせるべきである。


次に、説得する能力を高める、ということは結構難しい。「ぜーったい私の言うことが正しいのに!!」と思って絵を書いたり、丁寧に説明しても、相手はなかなか受け入れない。まあ、説明が下手というのは日々努力するしかないけど、もう少し違うベクトルで攻めたほうが良いのかもしれない。以前会社上司に勧められて読んだ本で「超文章法」という本があるが、そこでは文章で相手を説得する技がいくつも書かれていた。そのうちのひとつに

  • 権力を利用しろ

というのがあったように思う。これはたとえば、「IBMのXXやSunのXXもいっていることと同じですが」とか、「XXという論文があるのをご存知ですか?そこにも同じことが書いてありましたが、」などと他人の権威を利用する方法である。不思議なことに他人は、目の前にいる人を「こういう人」という色眼鏡でまず見て、そしてその人が言うことだから、ということから考える人が多い。「どうせ、いつも無意味なアーキテクチャしか言わない人だから。」と思われている場合、何を言っても無駄なのである。それよりは、「世間から認められている人」の権威を利用すれば、そういう人にも納得してもらえるのである。個人的にはとってもいやな話だな、と思うが、それでみんなが幸せになるなら致し方ないのかもしれない。ほかにも「XXXシステムの例ですが」など具体的な成功事例を出しても良いのかもしれない。しかもそれが、一部上場企業で、雑誌に載っていたりするとなお良いわけだ。ああ、いやな世界だ。


しかし、自分も説得された当てはまる経験がある。アーキテクチャ検討で「フレームワークトランザクションコントロールするべきか?」という話で、私は、トランザクションコントロール臨機応変に対応する必要があるため、フレームサポート外とすべき。フレームはシンプルであるべき。フレーム開発スケジュールも押しているので、あまり機能追加をすべきでない、と主張したのだ。しかし、ほかのアーキテクトから「Jakartaプロジェクトなどでもトランザクションはサポートする方向ですよ。」と言われ、押し切られたことがある。(実際には、今ではトランザクションはフレームでコントロールすれば良いとは思っているけど。抜け道さえあれば。)そのときは納得できないながら、ちょっとためらったのを覚えている。特に自分の詳しく知らないところで、時代は進んでいる、と言われると、自分の主張に間違いがあるのでは、とためらってしまう。

同じことを相手にすればいいのだ。だから権力を利用することはそれほど悪いことではないのかもしれない。